私がデイケアセンターに所属していた頃の話です。デイケアの活動が終わった夕暮れ時に、患者さんが「高森さん、なんだか疲れているみたいだけど大丈夫？」と声をかけてくれました。そして、「そんな時もあるよね」と優しく励ましてくれました。その患者さんとどういうことを話したか、細かいことは忘れてしまいましたが、少し心が軽くなったことは、はっきりと覚えています。今では「そんな時もあるよね」は、私の口癖になりました。
とある日。自分の気持ちを上手に伝えることや、困ったことに対処する方法を学ぶSST（社会生活スキルトレーニング）というプログラムで、「幻聴に対処する方法」という課題に患者さんと一緒に取り組みました。一人の患者さんが、「私は聖書の一説を心の中で唱えると少し幻聴が和らぎます。心が疲れているときは、自分の気に入っている言葉を心の中で唱えるといいかもしれません」というアイデアを出してくれました。それはいいかもね！と、参加しているみんなでそれぞれ好きな言葉を考えました。私は、崖の上のポニョから「上々だね〜」にしました。それぞれ思いついた言葉を心の中で唱える練習をしました。私は練習したおかげで、仕事や勉強に疲れた時に唱えることができるようになりました。これは結構効きます。
こうして振り返ってみますと、私はずいぶんと患者さんの言葉に救われてきたのだと思います。そして同時に、私は患者さんの心が少しでも救われるような言葉をかけることができたのだろうかと自問自答しては少し落ち込みます。「そんな時もあるよね」と自分を励ましつつ、患者さんやご家族の言葉に丁寧に耳を傾けられるソーシャルワーカーでありたいと思います。
文責 医療福祉グループ/高森