弓削病院につながる道には、大きなクスノキの並木があります。病院に出入りするたびに30年以上、その並木の下を通ってきました。
春になると、そのクスノキはたくさんの葉を落とします。クスノキは常緑樹でありながら、春先に葉や細い枝を一斉に落とすという特徴があります。
私はその様子を毎年見ながら、なぜこの時期だけ大量の落葉が起こるのか不思議に思っていました。しかし、考えているうちに落葉の時期は終わり、毎年また同じ疑問を抱いていたのです。
ある年、落葉があっても木に葉がたくさん残っている理由をじっくり観察しました。すると、落葉の前に新芽が芽吹き、古い葉に日光が当たらなくなることに気づいたのです。その結果、役目を終えた葉と小枝が同時に落ちるという現象が起きていました。
このサイクルによって、クスノキは毎年幹を太くし、光を取り込む面積を広げて成長しているのだと理解しました。この気づきに、私は大きな納得とよろこびを感じました。
日常の中にある気づきや発見は、人生の大きな楽しみのひとつです。些細なことでも新しいことを知ったとき、人はよろこびを感じるものです。疑問に思っていたことに答えが見つかると、さらに嬉しく感じます。
ここに書いたクスノキの話は、植物に詳しい人にとっては当たり前かもしれません。しかし、私にとっては新しい発見であり、大きな感動でした。
わからないことを理解することを楽しいと感じられたなら、世界はよろこびの宝庫になります。なぜなら、世界にはまだ知らないことが無限にあるからです。
遠くへ行かなくても、お金をかけなくても、少しの関心と注意で身近な世界に「よろこびの種」を見つけることができます。
私自身、若い頃に比べ体力も記憶力も落ちてきましたが、興味や関心を持ち続ける気持ちは変わりません。今でも、面白いことや不思議なことを探してキョロキョロしています。
この記事を読まれている皆さんにも、身の回りのモノや事柄に目を向けることをおすすめします。それがきっと、毎日の生活を楽しくしてくれるはずです。
院長